履歴書を見て思う事

不定期で求人する。3年くらい求人しない事もあるし、どうしたわけか年に2回も3回も求人する事がある。
一回の求人に付き最低でも100通以上の履歴書が届く。
僕らの会社で10人も20人も採用するはずもない。たいていは一人。500通来ても一人。
普通の会社のようにまずは履歴書を見て、面接。

履歴書を沢山見て思う事を少し。
音楽の仕事でなくてもあっても、これから就職しようとする人には少し参考になるかも、なんないかも。

一番感じることは、なんとまぁやる気のない履歴書の多い事か。
履歴書だけでビビッと来る事は少ないにしても、少しは気になるって事がないと、書類選考ではねられてしまう。
どんなに自分に自信があっても、まず履歴書が通らないと先にすすめないんだ。面接に強いんだなんて言っても、まず書類で残らないと。
そんな簡単な事どうしてわからないんだろうと思う。そこが分かってない履歴書は、すぐさま埋もれてしまう。
住所、学歴、好きな科目など、項目をただ埋めましたってパターンが多すぎる。そりゃ伝わらないなぁ。あんたアッサリし過ぎ。やる気あんならそういう書き方しないと。無いならいいんだけど。でも、無いなら送んないで。

誤字に気づいていても、斜線ひいたり、グジャッと塗りつぶしたりで、そのまんま続けたりしてるのを見ると「あー、こりゃダメだ」と思ってしまう。
就職ってのは、人生の中でも一大事に入ると思うんだけど。アプローチするとっかかりは履歴書しかないんだから、もっと真剣に書くべきだと思う僕は古いんだろうか。
僕自身、字が汚いので、上手い下手はあまり気にならない。でもどんなに下手な人でも、慎重に書く事は出来る。
飛ばし書きしたのと、下手なりに緊張して書いたのは、必ず見分けがつく。
一字でも間違ったら、めんどくさがらずに、最初から書き直すべきだと思う。僕はそうする。
書き直すのぐらいの手間を厭う人は、きっと仕事してもいろんな事がめんどくさいんだろうと想像してしまう。

やる気が伝わらないのは駄目だ。

やる気ばっかりで、押し押しで来るのも、どうも。
「音楽の仕事した事はありませんが、僕は漁師として6年間船に乗り続け、健康と根性にはナンヤラカンヤラ」以下、具体的な漁師体験が延々続く。そんな履歴書もよく見る。
この人は面白いかもしれないけど、一緒に働くのはどうなんだろ。
履歴書とは別の紙で職歴とか「私と音楽」みたいな作文を着けてくれる方も多い。これは好印象。
しかし、原稿用紙で20枚ほどあったりする人もいて明らかに過剰。

毎回、かならず履歴書と一緒に、自分が演奏してるデモテープを送ってくる人もいる。気持ちは分からぬでもないが不採用。こちらはスタッフを求めているって空気をつかんで欲しい。

6年ほど前の求人では68才の方が見えた。
「もし、この会社で採用していただけたら、骨を埋める覚悟でつくします」
いやいや、ちょっと待って下さい。僕はあなたの事まだ良く知らないし、そういうあなたもウチの会社の事知らないで言ってるでしょ。
イキナリ骨を埋められても、こっちがこまる。
切実なだけに、とても困る。


やる気が見えないのは勿論駄目だけど、あんまり押し押しでも駄目だ。
「どっちも駄目なのか、難しいな」って事でもないハズ。
僕らがいつも、日常のコミニュケーションでやってる事と同じだ。
今日、僕はどうしても矢沢永吉の話がしたいとする。もう朝起きた時から誰かに話したくてどうしようもなくムズムズしてるとする。
でもなぁ、起きてすぐ顔を会わせる娘たちにしても、しょうがないし、家内も同様。
会社にいって朝一で話すか。
なんだか、ケンジは忙しそうだ。しかめっ面だ。オノチンは聞いてくれるだろうか、でもエーちゃんの事を一から話さないと理解してくれそうにないぞ。じゃあアイツは、うーんまだ21才、だめだ。隣のアイツはノイズ専門。もっと隣は洋楽か。どうしよう。
僕ほど興味なくていいんで、せめてキャロルの事ぐらいは知ってるマスピーが出社するまで待つか。
なんてね。
自分の言いたい事を、どんなキッカケで、どのタイミングで、どんな熱さで話すのかはとても大事な事で、ぼくらは日常では無意識にやってる。
求人でも履歴書でも、同じだと思うけど。ちょっと例えが分かりにくかった?


履歴書の次は面接に。
緊張するのは仕方ないけど、あんまり構えないほうがいいとは思う。
その時だけ何かを取り繕っても、半年も働けばバレちゃうんで、始めにありのままを出すのがお互いに楽。

ほとんどの場合、履歴書でも面接でも大して良く分からない。その人の事をほんとには分からない。
「会って5分で全部分かる」なんて話を僕は信じない。
最後の最後はカンにたよるしかない。
カンの決め手は「一緒に働いて気持ち良さそうかどうか」。
少なくとも、ぼくらはそんな感じ。
聞いてみると、そんな感じの会社も結構多いんだよ、ほんと。