二枚目の病い

今日はちょっと真面目っす。
そしてバンドの人向けっす。特にキャリアの浅いバンドの人向けっす。


誰でもそんな面あるんだけど、
バンド組んで最初のころ、ムチャクチャに新鮮で、ピッカピカに輝いてて、一体こっから先どんなんなるんだろうってドキドキしたりする。
やってる方もそう、見てる方もそう。
そんな空気が盛り上がって一枚目のアルバム出したりする。
そこで、さらに加速して、
今まで知らなかった人も沢山巻き込んで、ツアーだワンマンだなんてことになって、
で、二枚目。
ここが大問題。ここが大きな分かれ目だったりする。
誰でも進歩したい。そして進歩する。
でも、その進む方向が、発信する側と受け取る側、おたがいに「これだっ」って事でなかなか一致しないんだよなぁ。
志の高いアーティストほど、変化を求める。
ファーストアルバムのツアーやってる最中に「もう俺たちこれじゃあないんだよなあ」なんて思ってる人もいる。
良い風にに言えば、「絶えず前進を求めてる」んだけど、悪い風に言えば、「飽きてる」。以前の自分、以前の自分の作品に飽きてる。これ、よくおこる。
で、受け取る方は、
好きになった瞬間の彼らが好きだったりする。
出会った時の感動がすべてだったりもする。
いつまでもファーストアルバムの衝撃が忘れられないでいる。
では、バンドは変えちゃいけないのだろうか。そんな事ない。


別な角度から。
バンドってやってると、どんどんクオリティが上がってくる。
うわぁずいぶんヘタクソだなぁって思うバンドもいる、正直。でもすんごい下手でもそんなこと全く関係なく、とんでもなくカッコいいバンドが、たまにいる。
そして、半年とか1年とか真剣にやってると、ウマくなるんだよ。当たり前だけど、ウマくなる、目をみはるくらい。
問題はそのウマくなり方。
またまた例によってはずし気味の例え話で恐縮だけど、
見てらんないくらい危なっかしい素人の喧嘩があったとして、これはこれでドキドキする。うわぁどうなっちゃうんだろうみたいな。
そして喧嘩してた二人が、一念発起して、暫くの間格闘技の修行をする。一年後改めてファイト。
もう素人でない。二人とも確実に強くなってる。
喧嘩なんだから見てなくていんだけど、どうも見てる人の心に火がつかない。
1年前、受け身も知らないで、ヘロヘロなパンチ繰り出してたのがあんなにエキサイティングだったのはどうしたわけだって、野次馬が思う。かく言う僕もそんな一人だったりして。
明らかに二人とも強くなってんだよ。絶対。でも見てる人の心うたないって事あるでしょ。
ま、これは初期衝動をどう持続してくかって事に通じてるかも。
クオリティ上げてっても、切れ味増してるバンドっている。
型も受け身も、ペース配分も、ショーとしての段取りも、なんもかも完璧にビルドアップした上で、それを上回る衝動を保ち続けるバンドいるよね。
保ち続けるって言うよりも増幅してくような。
いやいや、そうじゃないと5年も10年も続いていけない。
え、なに、格闘技とバンド一緒にすんなって、その通り。例えが遠くてすまんです。


この辺のことを総称して
「二枚目の病」ってよんでたりするんだけど、どうだろう。
なんかね、ボタンが掛け違っちゃう事ってあるんだよ。
やり手と受け手で。
もちろんやり手は自由だ。今これっやっちゃいけない、あれちゃっちゃいけないって事はない。やりたい事やっていいに決まってる。
でも、こんな掛け違いは、沢山見たよ。
そして、快進撃が失速してくのも、腐るほど見たよ。
今、二枚目の時期にさしかかってるバンドの人、今はまだ一枚目のツアーに出る途中の人、
余計なお世話かもしんないけど、そっと言っときますよ。気をつけないと、発信する側と受け取る側の思惑がずれちゃうよ。ちょとしたタイミングでずれちゃうよ。


じゃ、どうすればいいのかって、いうと。
どうすりゃいいんだろう。そんなもんいろんなタイプの人がいるんだから、一言で決まる正解なんてない。
大ざっぱでよければ、「やりきった後なら別な方を向いてもいい」って事はいえるかも。
昔よく言ったよね「これは三枚目っぽい」とか。
最近でもいう?
ファーストで世間にでて、セカンドで決定つけて、
三枚目に同じことやっても進歩ない。
三枚目は敢えてチャレンジ。
演奏はタフになってて、曲も多彩になって、えっそんな引き出しあったのって事も取り入れて、
名盤つくっちゃう。
そんなアーティスト結構いたと思う。
「いや、俺はファースト好きだ」って奴と「何言ってんだよサードだよ」って奴が、酒場で言い合ったりする。よく見る光景。
ここではセカンドの事がなかなか俎上にのらない。
そうだよなぁ、サードほど革新的でもなし、インパクトなら断然ファースト、デビュー盤に決まってる。
でも、ファーストの流れをくんで、そしてその世界観を決定づけたセカンドアルバムがあるから、名盤と言われるサードアルバムを産み出せたんだって事は言える。
セカンドがなかったらサードに行きつけなかったって事も言える。
これはバンド本人のコンディションの事だけでなく、
彼らを取り巻く空気、受け手の期待感みたいなもんもおおいに含まれてる。
別に飽きてもいんだよね。でも決定づけろ。そして次にいけ。って思うんだ。
「起承転結の『承』」。準備の時間かな。タイミングかな。半歩前進かな。ま、言い方はいろいろ。
そんな事考えながらやってる人、自己プロデュース能力高い人ってたまにいて、そこをキッチリやってみせる。
そんなバンドは受け手といい時間を共有して、いい具合に一緒に成長したりするんだよなあ。
自己プロデュース能力なんて言うと、鼻につくけど、それが出来る人の大部分は無意識にやってる。本能的っていうかな。それすごいと思う。
一生変わるなって言われたら誰でも嫌だ。でも、存在を決定づけるまでは浮気すんなって言われたら納得できるかも。
そうそう、僕も、どうしても三日禁煙しろって言われたら出来る。一生だと自信ない。
またまた、例えがずれててすまんです。


別な話といいたいとこだけど、同じ話。
そして、そんな事ぜーんぶ無視して、次から次へと新展開、昨日フォークやってたと思ってたら今日パンクになって、明日あたりは一人テクノみたいなとんでもない人が、大成功って事もまれにある。まれだけど、実際ある。
芸事はほんと、わかんない。絶対の正解はない。ナニを信じたらいいのか分かんなくなる。だいたい、異例のヒット飛ばす人は異例の方法論なんだから。いままで見たこともない人が、見たこともない曲書く人なんだから。
どれが正解かなんてホントはないの。だったら言うなって?
うーん、でも言いたかったんで。どしても言いたかったんで。
これは誰に向けて書いてるんだろう。
今フレッシュなに風つつつまれてるバンドの人たち全部。大事な人たち全員に向けて。
余計なお世話ですけどそうなんです。


今日はちょっと硬くて、長すぎですか。
長いついでに、最近聞いたいい言葉を最後に。
これはずっと前にとあるアーティストが言ったんだって。僕はまた聞きのまた聞きです。
アーティストが語る言葉としてすごくいい言葉だなぁと思って、大好きです。
「予想を裏切り、期待を裏切らない」
どでしょうか。