子供のこと

ひさしぶりに夕食を家で食べた。
「おまえ明太子食べないのか」って娘に言ったら、それには答えず、
「パパァ、靴とサンダルとどっちが好き」と質問される。なかなかに不思議な質問だなあ。さすが小学生。
質問に質問で答えると欽ちゃんに叱られるぞって教えたやりたかったけど、その話は長くなるのでやめといた。
さてさて、僕は靴とサンダルどっちが好きなんだろう。
正解なんてなくていいけど、気の利いた答えをしたいのは見栄か。
見栄でもなくて、ただ好かれただけなんだけど。
やっぱ、好かれたいなあ。
子供が出来てありがたい事は沢山あるけど、
誰でも期待されて生きているって事を感じられるようになったのは、とってもよかった事だと思う。
産まれたばっかりの娘を初めてみた時におどろいた。とってもちっちゃくて、ものすごい無力で、ほんとのほんとになんにも出来ない。
腹が減ったら泣いてるだけ、寒くても暑くても、お尻にウンコついてても泣いてるだけ、自分では寝返りすらできない。
誰かがしじゅう面倒をみてなかったら、全然生きていけない。
誰かつって、それは親なんだけど、ずーっと見守って手助けする労力って、そら大変なもんだ。
でもね、可愛いからいい。可愛いとなんでも苦でなくなるってのは嘘で、苦にはなる、そりゃ苦労は感じるけど、それよりも喜びの方が大きかったり。
で、成長とともに期待する。
期待つっても、大物政治家になれとか、No1コスプレイヤー目指せとかそんなんでなく、
どんな風に成長するんだろうなって事を想像するだけで楽しい。
うちはたまたま、女子二人。彼女たちはどんな風に大人になって、どんな女になってくんだろう。そう考えるだけで楽しい。
気がついてないけど、誰でもそんな風に愛情をかけられて、期待されて育って来たんだろなぁと思う。
小さいから気がつかなかったのか、忘れてるだけなのか、僕自身も両親にそんなまなざしで守られてたんだろうと思う。
誰だってそうだったんだろうな。
産まれた時にものすごく喜ばれて、スクスク育つごとにさらに喜ばれて。
そんな事感じてからは、人を見る時の心持ちが変わった。
ものすごく気怠そうにレジ売ってるスーパーの人も、極端に不機嫌な居酒屋の店員も、すんごい感じ悪いタクシーのおっちゃんも、
みんなそんな頃あったんだなあって思える。
この人にも親はいて、とっても沢山の愛情とか期待とかかけられた頃があったんだろうなと思う。
誰でも、喜ばれて期待されて、産まれて育てられてきた。だから大人になれた。
今僕がウチの娘たちを見るように、このおっちゃんのお母さんとお父さんは、このおっちゃんを見てたんだろうなって思う。
そんな子供のころが、このおっちゃんにもそこらのお爺ちゃんにもお婆ちゃんにもあった。当たり前だけど不思議だな。どんなイカした人にも、どんな普通な人にも、どんなヤな感じの人にも、そういう頃があった、そういう人がいたんだって、
自分が子供持って、初めて思った。
なんだみんなあったんだ。みんな特別だったんだ。

だからといって、世界中の人が好きになったり愛おしくなったり、だしぬけにハグしたくなったりはしないんだけど、
でも、そんな事思うと、あんまし人を嫌いになんない。ダメだこいつとか思わなくなる。
それって、結構いいですよ。
子供が出来て、良かった事のひとつ。
結構デカい、ひとつ。


ところでウチの長女は靴のほうが好きなんだって。
すんごい秘密めかして小声で理由を告げられた。
「踏まれても痛くないから」
ふーんとしか言いようがない。