LOST IN TIME

今日はリキッドルーム
「動き出したバスに乗って、
僕らは靴紐を結び直す」という、
どうしても二行に分けたくなるような、タイトルのツアーの最終日。
新旧おりまぜて、二時間半に及ぶライブは、切実で生々しかった。
気負いもなく、カッコつけてるわけでもなく、
ただただ、歌って演奏する、その真摯な姿勢は、目に迫るし、胸にも迫る。
大げさに言えば、こんなに純な魂が形をなして目に見えてる事って、そんなに沢山あるだろうかって思った。
新聞やテレビで知る世間にはウソや矛盾があふれかえってる、きっと人の世はそうしたもんなんだろう。
誰だって赤ちゃんときは、無垢な笑顔を振りまいてる。見てるだけで幸せになるし、本人も幸せそうだ。
なんで大きくなると、いろんな問題に直面したり、自分が起こしたり。どうして複雑になっちゃうんだろう。
今日のロストインタイムはとってもシンプルだった。
ある時は楽しそうに、そして真剣に、目を見開いて、全身で汗かいて、単に歌を届けようとする。
彼らも無垢だ。赤ちゃんでないけど無垢だ。それはとっても珍しいし、とっても素敵な事だと思う。
今日のここのステージ上には、全くウソがない、そんな気がした。


ツアーファイナルだけど、これが到達点、これが完成形って気配はない。
こっから始まる感じが充ち満ちていて、
変な言い方だけど、新人バンドの持ってるオーラみたいなもんを、
初めから終わりまでずーっと放出してた。
なにかがようやく始まる。そんな気がした。
バンドは変わっていくものだ。どのバンドでもずーっと同じでない。
不動のメンバーで30年ってバンドでも年齢と歴史によって、中身は変わってく。
スムーズに変化してく人がいる一方、不器用にしか変われない人もいる。
今回のツアーでは
オフィシャルのインタビューで海北くん自身が言ってた、
「左端から真ん中に行こうと思ったら、そっとハンドル切れなくて右側の壁にガチン!その状態でスピンしてる」
ってとこから完全に抜け出して、いままでモヤがかかってたとこからパーッと明るいとこに飛び出したような気がする。
ロストの目指す真ん中がどこなのかは、まだ誰にもわかんない。
きっと海北くんにも源ちゃんにも分かんないんでないだろうか。
右側なのか左側なのか、どっちかってことでなくて、両端にかけた橋みたいなもんだと思う。
デッカい橋かけて、欄干から遠く見渡せるような、沢山の人が渡れるような、そんな事だと想像する。
理屈ではそうだけど、それが実際にはどういう事なのか、まだ誰も見たことない、想像つかない。
ロストの事だから、きっと時間かかる。丁寧に確かめながら歩くから時間かかるけど、
彼らの目指す真ん中って、ロストが行きたいと思ってる場所って、
それがどんなとこなのか、確かめつついきつもどりつ、たまには横道にそれながらも、一緒に歩いて行くのは、
とてつもなく素敵な事なのではないかと、今日改めて思った。

なんのタイミングでもないこのツアー。
単にやりたいってだけの理由で始まってなんの準備もないツアー。
来てくれたお客さんは分かってると思うんだけど、今回のツアーはどこも満員にはなってない。
場所によっては、これで大丈夫って心配されるような集客のとこもあった。
でも、どこにでもロストを待ってくれてる人がいるって事が身に染みて分かったツアーでもあったらしい。
多くても少なくても、必ずいるんだって事がよくよく分かったって、ありがたいって海北くんは言ってた。
ありがたいから、なにか返さなくちゃとも言ってた。


そんなツアーが2007年もそろそろ終わろうとしてるこの時期に出来て良かった。
来年がのロストの立つべき場所、やるべき事がしっかり見えてきた。
年末にはまだ一月以上あるから気が早いだろうか、でも、言っちゃおう、
ロストの2008はとってもいい年になると思う。ほんとそう思う。


いいツアーだったけどなんだかんだ言って、まだまだ到達点でもないし、喜んでばかりもいられない。
バスは動き出しただけで、どこにも着いてない。中で靴ひも結び直してるだけ。
「いつまで靴ひもなんだよ、いいかんげんバス着かせろよ」なんて叱咤の声も背に受けたりして。
遅くても、回り道しても、時に迷い道しても、着実に前進してる、
前進する気概だけはいつも忘れないロストインタイムをこれからもよろしくお願いいたします。