the last day of syrup16g

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既に雑誌などではレビューや記事などが出てて、
syrup16gを知らない人にこそこのDVDを見て欲しい」って書き方も
「僕は開封しない」みたいな事書いてる人もいて、いろんな受け取り方があるんだなと思ってた。
僕の方は、いずれみるとは思うけど、それはいつなんだろうと呑気に待ってたけど、
ハイラインやタワーの店頭でかけるダイジェストみたら、居ても立っても居られなくなって、
これは待ってる場合でもないと、送ってくれると言ってくれてるのに待てず、自分からサンプル受け取りに行った。
初回版は三枚組なんだけど、ごく普通の一枚入りのケースに収められていて、外側に紙ケースがあるだけ。
潔い。
大至急取りに行ってみたものの、これは一体いつみればいいのだろうか。
コンサートの中身だけで3時間ある。特典ディスクもみると4時間近くでないか。
どこでいつ見るといいのだろうかと、二三日はケースの外側ばかり眺めて暮らしてたけど、
とうとう見てしまった。
家で家人が寝静まってから、12時を回ったころに見だして、
終わってもう一回みてみたら、
子供たちが学校行く時間になって、起き出して来た。
「何やってんの」
「うん、いや、あの。DVD見てるんだけど」
「なんで、朝」


冒頭のシーンから、もうかなり居ずまいを正される。横になって見てる場合でない気がする。
メンバーと舞台と照明と、なにより客席。ステージをぐるりと取り巻く人、人、人。
すべての要素が「シロップの最後の日」という一点に向かってる。
こんな空気の中でやってるライブを知らない、見たことない。
本当に、その場所にいた人全部が作り上げたものだと感じる。
その日に感じた事が細部までよみがえってくる。その日は感じてなかった事も沢山、今こうしてDVDを見て初めて感じる事も沢山。


今回は完全収録。
僕たちのレーベルでも二作のDVDをリリースさせてもらったけど、その時はライブを全部収録することはかなわなかった。
そこには悔いはある。
そして当時は、シロップの終幕を予想してはなかった。
やっぱりこのタイミングで、このシチュエーションでないと出来なかった事だと、今思う。
完全収録って言葉以上に完全に収録されてる。
ライブが始まる前、終わった後、普通だったら切られてしまうようなギターを持ち換える時間や、ただ水飲んでるとことか、アンコールの間メンバーがいないステージなどが、大事に大事に残されている。


シロップは正面しか見せないバンドだと思ってた。
ライブやCDで見せる印象は一つで、彼らが見せたい面だけ見せられているんだと思ってた。
サイドストーリーとか裏側とかは意図的に一切見せてないんだと思ってた。
ところが、こうしてどこも切られてないライブの本編と、特典のバックステージのドキュメント見て、それ間違いだったって気付いた。
あ、シロップって最初から正面しかなかったんだ。
バックステージの映像みても、全く「意外な一面」とか「じつはこうなんだ」とか一切ない。呆れるくらい、ない。
ただひたすら、シロップらしいだけだ。
むしろ、本編のライブの中の、ほんのちょっとした仕草や表情のほうが発見が一杯ある。
シロップは見たまんまだった。ライブの場所で全部見せてる。そこだけがシロップがある場所だったんだって、今気付いた。


頭のほうから、見逃せない場面が続く。
軽く緊張する。ポテチ囓ってる場合でない。
長さは感じさせないけど、物理時間は確かに長い。その上、映像は実に細部に拘ってる。
その全部を一連なりで受け取って初めて見えるものは、きっとあると思う。そうでないと受け取れないものがあると思う。


本編も後半になってくると、中畑くんとマキさんはランナーズハイみたいなもんだろうか、さらにキラキラしてくる。一方、五十嵐くんはこの世の人でないような顔になってくる。いろんなテンションの上がり方があるんだなと思うけど、その五十嵐くんの上がり方にはなにか業のような物を感じる。特に「途中の行方」は鬼気迫る。
そしてアンコールになると、少し顔色が戻ってくる。アンコールで着てるTシャツは「昇華」。
思えば、シロップが一番最初に作ったTシャツが「昇華」だった。
初めてその漢字二文字のプリント見たときは、大変にたまげた。誰が買うのか予想も出来なかった。
復刻されて、今日五十嵐くんが着ているTシャツも昇華。
こじつけでなく、ここで昇華してる。昇華してくさまが見えると思った。
最後の最後は変態Tになっちゃうんだけど。


蛇足めくけど、
個人的なベストシーンは
「無効の日」で五十嵐くんの肩越しに客席が映ってるカット。
水辺にたって、夜の沼に向かって一人うたってるかのように見える瞬間があって、武道館てことを完全に忘れる。
それから「センチメンタル」の弾き語り。もしココだけのためにDVD買う人がいたとしても全く驚かない。

ソニックの中畑くん。
あと、リアルの冒頭のマキさん。ココ最高。
「正常」のアタマの中畑くんとか、それ見てるマキさんとか。
ホントはね、もっともっと美しくて、震えるくらいのシーンが他に山ほどあるんだけど、なんかそこいっちゃうんだよなぁ。
ネタバレ気にしながらのそんなアイマイな言い方じゃ、分かんないよね何のことだか。そのうちに語り合いましょ。
とにかく、このDVDはライブの絵の中にいろんなものが一杯ある。
あ、もちろん特典のドキュメントは面白いですよ。「思った通り。やっぱりこんな感じ」ほんとそう。それだけで貴重、それだけで面白い。


意味ある事も意味ない事もずらずらと書いたけど、
このDVDは3月1日の武道館を『再現』するだけじゃなく、さらに深いとこにさらに近いとこに迫ってる。確かに僕も行ってたんだけどなぁ、同じ景色が違って見えてくる。でも、やっぱり同じものだ。その日その場所で起こった事だ。
このDVDは作品としてとんでもなく高いクオリティを持ってる。同時にシロップのストーリーを全部持ってる。全部。
ラストアイテムがこのDVDだってのは必然だった気がする。
『まるで生きてるような遺影』って言ったらいいすぎか。
でも、見てると解散してる事を全く忘れてしまう。次のライブ見逃さないぞって気になる。
そんな感想でした。
今更僕がオススメしなくても皆さん見るとは思うんですが、
何があっても見た方がいいっす。とにかく見たほうがいいっす。