ポリの野音

快晴だった。
とっても気持ちのいい日だった。


ワトソンからオールウェイズハピネスまで5曲、すんごいコアなとこから始まる。これでいいのかって、驚いた。
このツアーはこれでやって来たって後で聞いたけど、
かなり難しいとこから入っていくのだな、ずいぶんとチャレンジなんだと思った。
なぜにそこでチャレンジ、それはどういう事なんだろか。
なんて心配してる僕をよそに
客席は相当にハッピーで、祝祭気分。
とっても自由そうで、シアワセそうな空間になってた。
いろんな野音があるけど、ポリの野音はこういう事なんだなあと思って、
とっても嬉しかった。
ギュウギュウ詰めのライブハウスでしか味わえない快感もあるけど、
今日みたいに一人一人の空間が確保されてて、上を見渡してもオープンアエアーで、
そんなとこで見るポリシックスは格別。
客席だけ見渡すと、かなり高速なカリプソのコンサートみたいよ。
コレ言ってることわかりにくいかなぁ。ほんとそんな感じなのよ。つまりシアワセそ。


なんだかポリに快晴は似合わないなあ、なんてちょっとだけ思ってたけど、
今日は晴れててよかったよ。
熱気ある客席にときおりすんごいいい風が吹き抜けるのよ。
その風を感じてるだけで、ああ野音ていいなあと思う。
開演の時間は明るかったけど、段々と日が暮れてくる。
夜になってく過程がゾクゾクする景色だった。
「すごい気持ちいいー」ハヤシ君が何回か言ってたけど、僕らもすごく気持ちよかった。

中盤、ヘッドクロックだったけかな。tei! tei! tei!だったかな、
あ、揺れてると思った。
野音のコンクリートの床が揺れてると思った。
錯覚だったかな、どうなんだろう。
どっちでもいい。ここには何回も来てるけど、20年まえから来てるけど、そんな風に感じたのは初めてだ。それだけでいい。


この期におよんで、曲ナカのMCで「ナオンのヤオン」の説明をされるとは思ってもいなかったよ、ハヤシくん。
しかも説明が的確すぎて、VJ修行の成果をみたような気がした。ノイ。
僕もかなり頻繁に「ナオンのヤオン」は言いますが、20代の人は「はぁーん、なんすかそれ」って感じで
30代中盤以降の人は「まだそんな事言ってんスカ」って具合で、どっちにしても相手にされてないっす。
ハヤシくんのお陰でワードとしての「ナオンのヤオン」が復権すれば、僕も嬉しいっす。イベントタイトルでは歴史に残る名作ワードだと信じます。


乾杯でも打ち上げでもリーダー、ハヤシは
10周年を迎えたけど、11年目が1年目のつもりで、新人のつもりでガンガンガンガン行きますんで、よろしくお願いします。
って挨拶してた。
「ガンガンガンガン」のとこは、ライブ中に言ってる言い方なんで、ほんとおかしかったよ。
そんなことより、
いまさらだけど、ポリシックスの魅力は「いつも新人のつもり」ってそこに凝縮されてるような気もする。
今日の野音は素晴らしいライブだったけど、それはもう、さっき終わった事で、
彼らは既に次に向かってもう走り出してる。
『今日良かったっす、ジワーン』みたいな事はほんと打ち上げまで。
さ、切り替えて明日になったら荷造りしてもうちょっとしたらフランス行きだ。
いつでもフレッシュな気分で、常に新しい事を面白い事を探してトライしてく、
そんな精神を新人らしいつってもいいし、newwaveだつってもいいし、
なんつったってそれがポリシックスらしさだと思う。


歴史みたいな事感じてちょっとだけ、ウエットな気持ちになったのも事実ですよ、野音で。
だって、僕らが初めて出会った頃の10代のポリシックスは、エネルギーだけは旺盛だったけど、
どこのライハウスでもこぢんまりと、少数精鋭のお客さん相手にやってたんだもん。
それがこんなとこでこれだけのお客さん相手にライブして、そして全身全霊のロックエンタテインメントになってて、
しかも伝わりすぎるほど客席にも伝わっちゃってて、なんかのルツボと化していて、
そんなこんな思い出したら、ちょっとだけウェットにもなりますが、
それはほんとにちょっとだけ。
実は歴史なんて関係ない。
この場で見たものだけ、この場にあるものだけ、
ほんとのほんとにそれだけで、充分に感動的なライブだったっす。
ポリはまだまだこれから沢山ライブやると思います。
次の旅に出発だ。
野音はこれからもずっといろんなアーティストが登場するんでしょう。
今日はバラして、明日の仕込みだ。来週も来年もいろんなコンサートが次々やってくる。
なにもかも、移ろっていきます。何もひとところにはとどまんない。
それはそれでいい事でもある。少し寂しい事でもある。
でも、僕は今日ポリの野音で感じた事は忘れないと思う。
やっぱ忘れないと思うわ。
そういう大事な記憶をどのぐらい増やせるかが、自分が生きてる醍醐味のような気がする。
そんな事思って、感謝して寝る。