インディーとメジャーと配信と

今日は硬いかも。それでもって長いかも。そして最終的に何をいいたいのか不明かも。注意。


音楽配信が話題になってる。
もともと、なんか起こりそうな雰囲気は2.3年前からあったけど、本格的に「何かが変わりそう」って
思ったのはやっぱり、今年の夏にiTunes Music Storeが日本に上陸してからだよね。
あれから一気に、配信と配信をとりまく状況がリアリティを増してる。
その後に続くサービスも、いろいろと構想が練られて、表立っても、水面下でも進行中。
「何かが変わりそう」って、そりゃ何かは変わるんだけど、
なにもかも変わるって言い方でイニシアティブを取ろうとしてる一部の人や
それを鵜呑みにして、意味なく悲観的になっちゃったり、
意味なく楽天的になっちゃってる人達の事が気になる。


「こういうサービスが主流になれば、レコード会社などいらなくなって、
僕が作った曲をそのまま大勢の人に伝えられる。
僕にもきっとチャンスあるかも。
気軽に送ってみよう。」
そんな事いうアーティストの人、アーティスト以前の人。スタッフにもね、そんな事思ってる人はいる。


それ、無いと思うんだよね、悪いけど。
僕は無いと思う。
あのう、いつだって気軽には送れるんだけど、チャンスを掴まえやすくなるって事はきっとない。
そんな事思うなら、今送ればいいんじゃないだろか。
やるならやる、やんないならやんないで。


CDというメディアの影響力が薄れ、既存のレコード会社のパワーが減少して、音楽業界全体の枠組みが変わる。
だから、自分にもチャンスあるんじゃないかしらって声を頻繁に聞く。
現状が閉塞してるって事かね。
でも仮に、配信が音楽を売る手段のメインストリームになったとしても、その閉塞感は変わんないよ。
それは、あるべくしてあるもんだから。
誰もかれもが、なろうと思うだけで、アーティストになれるもんでもない。生活するならなおさら。
いつだって、出てくる人は出てくるし、残るものは残る。


レコード会社の主な仕事は制作、宣伝、営業。
音楽つくって、広めて、売るって事だ。
これはビニールでもCDでも配信でも変わらない。
アーティストの仕事は曲作って、録音して、ライブやって、
それもあんまり変わらないと思う。これから先もね。
いつの時代にも才能あるアーティストはいて、出てくる人は出てくるし、残るものは残る。
そんな風に思うんだけどね。


メジャーとインディーに境い目が無くなったって言われて久しい。
僕は境い目はあると思うし、両者ともその境い目に自覚的である方がいいと思う。
いろんな見方があると思うけど、僕が考える境い目は「何枚売るといいのか」って事だと思ってる。
10年ぐらい前だろうか、メジャーでは10万枚売るアーティストを育てて、始めてそのプロジェクトは成功って時代があった。
最近はそのラインは20万枚に上がってきてるような気がする。
20万売る事が一つの目標で、もちろん50万、100万になればもっといい。
その為に、お金も使うし、マンパワーも使う、仕組みも使う、それがメジャーって事だと思う。
そのためにはどんなアーテストと手を組めばいいか、その為にどうすればいいか、いつ頃に目標は達成されるのか。
そういう仕事。
それはそれで面白いよね。意義あると思うし。
インディーではどうだろう。
とりあえず、出す事が先決のような。気に入ったら出しちゃうみたいな。
でも、なにも考えずにそんな事やってると、すぐに潰れる。
新聞配達やりながら、あるいは佐川急便で働いて、赤字を埋めてレーベルを続けるって人もいるにはいるけど、
それはもはや、生き方であって、会社ではない。
だから、大抵のレーベルは1000枚売れるなら1000枚の、3000枚売れるなら3000枚の予算で
物事を進める。
スタジオ代を筆頭に、チラシとか、プレスとかなんやらかんやら。
その時の目標は、1000枚売る事だったり、3000枚売る事だったりする。
そして、ごくまれに1000枚くらいの体制で作ったCDが10万枚売れたり、100万枚売れたりするって
事がある。
それがインディーのスタイルなんじゃないだろうか。
10万枚以上目指すプロジェクトを作るのがメジャーで
アーティストにあわせたプロジェクトを作るのがインディーなんでないだろうか。
なんて思ってるんだよ。
だから、メジャーレーベルの中でも時折みられる、「大きく売れる事を前提としない」プロジェクトは
僕から見ればインディーなんだよ。
反対に、インディーのフィールドでやってるけど、「明らかに高い目標立てて、売る事を目指してる」プロジェクトはメジャーなんでないかな。
私見だけどね。


配信が音楽業界に占める比重が大きくなってくれば、いくつかのメーカーは衰退して
いくつかの新しいメーカーが発展していくんだろうな。
プロダクションとかね、アーティスト本人とかね、そういう人たちが「新しいメーカー」で
しかも、かなり有力だったりする時代になるんだろうね。


配信の時代になったらメジャーは駄目でインディーがなんやらって、簡単に言うのも間違いだと思うんだよね。
やっぱ、CDだ携帯だPCだって言ったって、メディアがいくら変わったって、聞かれてなんぼ。
心動かす音楽を作る人がいて、広める人がいて、売る人がいる、その構造は変わんないよ。
1000万ダウンロード目指して作るプロジェクトも、これからは出来ると思うけど、
もちろん、そんなやり方ばかりでなく、やれるとこからやっていくプロジェクトもいくつも出来ると思うのよ。
それは、僕らがやってきた事とおんなじ。
その辺はあんまり変わんないんじゃないかなぁ。


配信の時代がやってくるからって、あんまり浮かれる事もなく悲観する事もなく、
配信の時代には配信の時代の、『イイ仕事』をいくつか残せればいいんでないだろうか、と思うんだけど。
どでしょかね。